就寝前の読書は至福のひと時です。私の場合、夏はホラーや推理、青春モノが読みたくなり、冬は時代小説や昔の探偵小説、そして文豪の名作が読みたくなります。
ここでは、明治から昭和初期の文豪達の恋愛小説を紹介します。どれも今の時代とは違う社会や暮らしが舞台ですが、どれも深く印象に残る作品です。書店には置いていないことも多いので、図書館で借りるのがお薦めです。
●野菊の墓 1906年 - 伊藤左千夫
主人公政夫の回想の物語です。旧家の跡取り息子だった政夫は、手伝いに来ている2歳年上の従姉民子と親しくなります。二人の仲は村人が噂するほどになり、心配した母は政夫を東京の学校へ入学させる事にします。その後民子は家に戻され、不本意ながら嫁いでいきますが、その後流産が原因で亡くなってしまいます。民子の左手には政夫の写真と手紙が堅く握られていました…。
純愛小説の代表といえます。今の好き勝手に生きられる時代では味わえない悲しい明治の恋物語です。
●棘まで美し 1930年 - 武者小路実篤
画家を目指す気難しい竹谷と、社交的で明朗な山根は、先生の家で吉村貞子に出会います。竹谷は吉村を好きになってしまいますが、吉村は山根に心を奪われ、二人は結婚の約束する仲になります。失意の中、偉大な富士山の画に挑戦する竹谷の真摯な姿勢に吉村は惹かれるようになり、山根もまた才能を開花させるため新たな歩を進めます。
悪人が一人も出ない武者小路実篤らしい、誰もがハッピーエンドな結末で、清らかな気分に浸れます。
●秋津温泉 1948年 - 藤原審爾
空襲で生きる気力を無くした河本は、死に場所を求めて秋津温泉を訪ねます。そこで出会った女将の娘新子と惹かれ合います。その後何度か河本は秋津を訪れますが、堕落した男になっていました。河本が結婚していることを知り苦悩する新子。最初の出会いから17年が過ぎ、再び秋津を訪れた河本に新子は「一緒に死んで欲しい」と伝えます。
こちらは健全な世界でなく破滅的な物語です。薄っぺらい遊びの恋愛と違う死をかけた愛ですが、読後感は美しいです。
「野菊の墓」と「秋津温泉」は映画化されています。
posted by Kadan at 01:38|
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