2021年06月11日

サスペンスで変な映画「結婚相談」

円地文子の小説を元にした1965年の映画「結婚相談」を観ました。当時大人気だった芦川いづみが婚期を逸し焦る30歳の主人公を演じた異色作です。

30歳になる鶴川島子(芦川いづみ)は、友人の結婚であせりが生じ、新聞広告でみつけた戸野辺力結婚相談所を訪ねます。果樹園を経営する初老の男・日高を紹介された島子は、父親のような優しさと包容力を感じ、夜を共にしてしまいますが、数日後日高に妻子があることを聞かされます。結婚相談所が狂言見合用の役者を使い相談者をカモにして金儲けをしていることを知った島子は、ヤケになり戸野辺力のいいなりにコール・ガールとして働くことになってしまいます…。

公金横領犯高村(高橋昌也)との関係あたりから、一種異様な世界になっていきます。女所長戸野辺力(沢村貞子)の笑い声、狂人秋宏の母、鎌田夫人(細川ちか子)の魔性感、そしてエンディングのカメラワークと音楽、実験的とも違うホラーやサスペンスの匂いまでするなんとも言えない不思議な映画でした。




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2021年05月15日

白昼夢のような「血のお茶と紅い鎖」


オープニングからすさまじい世界観で始まる、2006年制作のダークなおとぎ話「血のお茶と紅い鎖」を紹介します。

貴族の白鼠の依頼で、カラスとコウモリを融合したような"森の生き物"は人形(女性の死体のような)を作りますが、いざ完成するとその人形が手放せなくなってしまいます。卵が詰められた人形を持ち去る貴族の白鼠、取り返そうとする"森の生き物"。ドクロの顔を持つ小鳥や花、女性の顔の蜘蛛などが登場する奇妙な闘争の物語です。

この作品にはセリフはなく、鳴き声?と効果音、BGMのみという斬新なもので、エンタメ好きな方はついて行けないと感じるでしょう。逆にシュールなものやアングラな世界、ダークファンタジー、アート系が好きな人は、見入ってしまう、そんなストップモーション・アニメーション映画です。



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2021年03月01日

「ブレンダンとケルズの秘密」の背景美


アイルランドの美しいケルト装飾写本「ケルズの書」をめぐる少年修道士の冒険を描く、2009年のアニメーション映画「ブレンダンとケルズの秘密」を紹介します。

9世紀のアイルランド。砦にもなっているケルズ修道院に遠くの島から美しい書物を携えた老人エイダンが「聖なる書」を携えてやって来ます。その書に興味を持った少年の修道士ブレンダンにエイダンはインクの原料となる植物の実を採ってきてほしいと依頼します。ブレンダンは、オオカミの妖精の少女アシュリンと協力し、危険な森で何とか実を採取しますが、ケルズ修道院にもバイキングがやってきます…。

背景の質の高さはまさにアート作品と言ってもよく、動物も含めキャラクターのデフォルメは秀逸です。日本の"アニメ"が好きの人にはあまり評価されないかもしれませんが、アーティスティックな"アニメーション"作品が好きな方にはお薦めです。



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2021年01月27日

妄想と狂気の蟲

「エクソシスト」のウィリアム・フリードキン監督による、妄想と狂気の世界を描いた「BUG/バグ」を紹介します。

息子を亡くし心に傷を負ったアグネスは、仮釈放された元夫の暴力から逃れるためにオクラホマ州の安モーテルで暮らしています。そんな中、彼女は辛い過去を背負うピーターという男と出会います。目に見えないほど小さな“虫”の存在に異常な警戒心を持つピーターは、モーテルの部屋から虫を駆除しようと躍起になりますが、彼の言動は徐々に異常性を増していき、アグネス自身も感化されていきます…。

イカれていく後半の2人を観て思ったのが、どんなに周りが相手に真実を伝えよう、心を開かせようと努力してもイカれてしまった人には通じない、という虚しさと、イカれた人は決して自分が間違ってると疑問を持たない頑なさ、そしてそれに洗脳され染まってしまう恐怖です。これはテロ思想=極右・極左思想、カルト宗教にも通じる恐怖です。もし自分の身近な人がこんな状態になったら…考えるだけでゾッとします。



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2020年12月16日

驚愕のイントレランス

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今から100年以上前の1916年に公開された、恐ろしいほど壮大なサイレント映画の大傑作「イントレランス」を紹介します。

当時としては破格の38万5000ドルの製作費を投じた超大作で、4つの不寛容のエピソードが描かれています。見所は、異なる神の信仰を嫌うベル教神官の裏切りでペルシャに滅ぼされるバビロンを描く「バビロン篇」の驚愕するセットです。サンセット大通りの脇に高さ90メートル・奥行き1200メートルにも及ぶ巨大な城塞は、ちょっと信じられないレベルです。今ならここまですごいものはCG以外まず無理でしょう。他にも大胆なクローズアップやカットバック、ロングショット、移動撮影などの当時としては画期的な映像となっています(特に1:42:18あたりのシーンは圧巻です)。




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2020年06月06日

ふるさとの加藤嘉


徳山ダム建設で湖底に沈む、岐阜県の徳山村を舞台にした1983年の映画「ふるさと」を観ました。観る前のイメージは、ダムに沈む村の悲哀を描く社会派な映画、という感じで”ちょっと重そうだな”とそれほど期待はしていなかったのですが、消える古い暮らし=自然の中での老人と少年のふれあいが暖かく、そして主人公、村の老人役「加藤嘉」の怪演がすごい映画でした。

ダムに沈む徳山村の老人・伝三は、妻を亡くして痴呆症状が現れ始めていました。かつて伝三がアマゴ釣り名人だったことを知った隣家の少年・千太郎に誘われ伝三は一緒に釣りに行くようになると、病状は軽くなり平穏な日常が戻ってきました。しかし長雨が続き釣りに行けなくなると痴呆症状は狂的になり、隠居部屋を破壊するほどになってしまいます。千太郎はそんな伝三に長雨で中止になった秘境・長者ヶ淵へ釣りに連れて行ってくれと頼みます。平静を取り戻した伝三は千太郎と長者ヶ淵へ向かいます‥。

とにかく加藤嘉の鬼気迫る演技は必見です。モスクワ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞しており、映画祭の審査員は、加藤の演技がリアル過ぎて、本当の痴呆症老人と思ってしまったと言われています。昭和に活躍した俳優は、本当に存在感ある人がたくさんいました‥。

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2020年01月16日

ハンガリーの奇妙な日本趣味映画


「九尾の狐」伝説をモチーフにした、なんとも表現できない2015年ハンガリー映画「リザとキツネと恋する死者たち」を紹介します。

1970年代のブダペスト。元日本大使未亡人の看護人として働く地味で孤独なリザは、日本の恋愛小説と彼女にしか見えない日本人歌手の亡霊“トミー谷”の歌声が心の拠り所でした。30歳の誕生日を迎え、小説にあるような甘い恋に出会おうと外出許可をもらい2時間だけ街に出かけますが、外出中未亡人が殺害される事件が発生します。そこから彼女と交錯する人たちが、なぜか次々と殺されていきます…。

トミー谷の歌う日本歌謡風の奇妙な曲が散りばめられ、”自分はいったい何を観ているんだろう”と混乱してしまう可能性もありますが、なんとも言えない奇妙な世界観を味わうことができます。


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2019年09月23日

純愛名作「野菊の如き君なりき」


伊藤左千夫の名作「野菊の墓」は、何度も映画やドラマ化されていますが、その中でも最も原作の世界を味わえる、1955年・木下惠介監督「野菊の如き君なりき」を紹介します。ストーリーはベタすぎるほど知られていますが、年老いた男の回想で始まる、若き日の純愛を描いています。

旧家の息子政夫は、手伝いにきた2歳年上の従姉の民子といつも一緒にいるほど仲が良く、二人はお互いを「民さんは野菊のような」「政夫さんは竜胆のよう」と例え、惹かれあっていきます。子供から大人への時期、村に噂も広まって周りは心配するようになり、政夫は寮のある町の学校へ入れさせられ、民子は半ば強制的に嫁がされたことで、悲劇的な結末を迎えます…。

残念なのは、モノクロ映画なので美しい田園風景に色がないところです(原作の場所は柴又の向かい松戸矢切ですがロケ地は長野千曲川や飯綱)。ただ田村高廣の民子の死を政夫に伝えるシーンの演技は必見です。大げさで感情的な演技になりそうな場面をさりげないようでものすごく深い悲しみを見事に伝えています。1981年の松田聖子主演のものも悪くありませんが、原作を好きな方は、1955年の木下作品をお勧めします。





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2019年02月27日

ブッとんだ「狂った野獣」

いかにも70年代のやりたい放題な映画「狂った野獣」を紹介します。渡瀬恒彦主演の重厚なパニック・アクション映画と思ったら、笑いどころ満載のブッとんだ映画でした。

テストドライバーをクビになった速水は、8500万円相当の宝石を盗み、恋人・美代子と落ち合うため路線バスに乗り込みます。そこに銀行強盗に失敗した谷村と桐野が逃げ込み、バスをジャックして乗客全員を人質に取ります。緊張状態の中、心臓に持病のあるバス運転手が発作を起こし、暴走バスはパニックになります…。

ストーリーだけみると、手に汗握るパニック映画と思ってしまいますが、バスに乗り合わせている人物が、オーディションに向かう女優の卵、動物病院へ急ぐおばさん、なかばボケて動じない老人、不倫中の学校教師、チンドン屋、と一癖も二癖もある人たちばかり(濃すぎる配役も)で、普通の映画でないことがわかります。超個性派俳優の宝庫「ピラニア軍団」だらけといい、今の道交法ではあり得ない公道での無茶な撮影といい、70年代のやりたい放題な世界が楽しめる映画です。




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2018年10月18日

考えさせられるオクジャ


心優しい巨大生物と一人の少女が巻き込まれてゆく、Netflixオリジナル映画「オクジャ/okja」を紹介します。コミカルな面もあり気軽に観られますが、観終わった後に考えさせられる作品でもあります。

世界的な畜産企業であるミランド社の遺伝子組換えによって生み出された生物は、世界各国の畜産農家に預けられ、10年育てた後に発表されることになっていました。韓国の山奥で育てられた巨大生物は、農家の少女ミジャに「オクジャ」と名付けられ、山の中で祖父とともに仲良く暮らしていました。ある日ミランド社に務める叔父とアメリカからの取材チームが現れ、オクジャはニューヨークへ移送されてしまいます。買い取られることを知らなかったミジャは怒り、オクジャを取り戻そうとソウルに向かい、そこで出会った動物愛護団体とともにニューヨークへと追いかけますが、醜い争いごとの渦に巻き込まれていきます…。

心優しいオクジャとミジャの関係を知っていると、畜産企業の悪徳な世界に怒りを覚えますが、普段何も考えず食べている食肉のシステムも同じようなもので、日本でも毎日何万頭の牛、豚、鶏が殺され、食肉となってスーパーに並んでいます。残酷だからと、みんながベジタリアン、ビーガンになれば解決するのか?最近の研究では、植物にも痛みや苦しみがあるかもしれないと言われています。動物はかわいそうだが、植物は感情が見えないから引きちぎって、切断して殺していいのか?考えれば考えるほど、答えが出ませんが、何も思わない人より思う人でありたいと思います。


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