正月、「一〇〇年前の女の子」という本を読みました。著者船曳由美さんの母テイさん(2009年時100歳)の子供時代の回想を中心に物語風にまとめたもので、当時の村の正月、節分などの風習や農村の様子を描写しながら、成長してゆく姿が描かれています。物語としても民俗学的資料としても、とてもいい本だと思います(装丁はちょっと…ですが)。
舞台が足利の高松という所で、私の田舎太田市新田とはそれほど離れていない場所です。関東平野の端であり、呑龍様や例幣使街道など、知っている場所が出てくるのでとても身近に感じられ、私の祖父母もこんな暮らしをしていたのかもしれない、とちょっと感慨深いものがありました。
ヤスおばあさんが元気でテイが子供だった頃、数百年続いたあらゆるしきたりや行事は今後もずっと続くと思われたでしょう。まさか50年も経たずに暮らしや風景が大きく変わり、早乙女姿も井戸替えも迎え火や石臼もなくなり、そして暮らし全般を貫く風習が消えるとは思いもしなかったでしょう。
この本を読んで、以前にテレビで過疎の農家のお年寄りが言っていた一言が、思い出されました。
「機械化して農作業はすごく楽になった。でも楽しくなくなった…。」
一家近所総出で歌いながらの田植えや、畦でのお茶菓子とおしゃべりの一休みなど、たいへんな中にも活気と暮らしの楽しさがあったということでしょうか。楽で便利になり、暮らす楽しさが消えた…。堕落した私にもちょっと分かる気がします。
最後に、この本の執筆時点では、100歳のテイさんだけでなく、義妹のミツさんも96歳で存命ということです。ぜひどこかのテレビ局でこの本の特集をやってお二人を拝見したいものです。
posted by Kadan at 01:48|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
本紹介